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様子を伺っていたフロストの視線が黒翼から外される。
ブレスが城壁に着弾したのはフロストが城壁を飛び出した直後だった。
走るように城壁を駆け降りたフロストは骸に成り果てたハンターの墓標を引き抜いた。
その墓標はハンターの相棒であり、魂でもある武器。
名も知らぬハンターから拝借したのは大剣、角竜剣ターリアラート。
ランスのような刀身にディアブロス由来の素材を使用した大小二つの刃が取り付けられた異形の大剣。
刃はところどころ欠けてしまっているが、今のフロストが気にする様子はなかった。
水平に刃を構え突撃するフロスト。
だが、その速度は大剣を構えたままだというのに獣の速度を保ったままであった。
黒翼も迎え討つべく大地を這った。
両者の距離は次第に詰まってゆく。
速度の均衡を最初に崩したのはフロストだった。
走る速度を更に早め跳躍すると、黒翼の頭上を舞い頭からターリアラートを叩きつけた。
その一撃は黒翼の突進に強制停止をかけ、衝撃で二本の角がへし折られるばかりか頭部は土煙をあげて大地に沈むのであった。
フロストはそのまま大剣を振り上げると腕力に任せ五度に渡りハンマーの打撃染みた斬撃を繰り出した。
だが六度目を振りかざす直前になり、ターリアラートは武器としての命を終えた。
それと同じくして顔をあげる黒翼。
その頭部は角という角を全て折られ、鋼鉄並の強度を持つ皮膚には骨にまで届く深い裂傷が刻まれていた。
フロストを見つめる黒翼の瞳には憎悪の他に初めて感じた恐怖が滲んでいた。
威嚇とも悲鳴ともつかぬ咆哮をあげた黒翼は地上戦を放棄し、空へと飛び上がるのだった。
その姿を忌々しそうに唸りながら見つめるフロストだが、すぐに視線はまた別の武器へと向けられる。
フロストは別のハンターの骸の傍に行き、突き刺っていた撃竜槍【吽】を引き抜くのだった。
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