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聴いた事もない衝撃音が二つ、ほぼ同時に轟く。
一つはラオシャンロンの体当たり、一つは撃竜槍の起動音であった。
ラオシャンロンは体当たりにより、城門ごと砦をなぎ払い、完膚なきまでに破壊した。
そして体当たりと同時に放たれた四本の撃竜槍はそれぞれがラオシャンロンの体を突き抜け、赤に染まった矛先が、勢いよく噴き出す鮮血と共にその姿を見せつけた。
呻きあげ、自らが作った瓦礫の山に倒れ込むラオシャンロン。
その四肢はもう力強く大地を踏みしめる事はなく、長い首を僅かにもたげるだけであった。
どこか醒めた目で事の一部始終を見ていた俺はようやく立ち上がり、脇に放り投げた龍刀を拾いあげた。
「リーア、お前はここに残れ」
彼女は座らせたまま両肩に手を起きリーアの瞳を見つめる。
「どうして?」
不思議そうに俺を見上げるリーア。
「ここからはお前のやる仕事じゃない」
俺はそう言って自嘲を孕んだ笑みを見せた。
「生き物を狩るのがハンターだ、だがお前にはまだ早いよ、リーア」
同じ様に回りには生き延びたハンター達がそれぞれの得物を持ち、この時が来たかと立ち上がった。
皆目つきは通常のそれとは違い、彼らを見たリーアも何を語らずとも悟り、顔を伏せた。
「…フロストも行かなきゃならないの?」
「――あぁ、これも依頼だ。俺達でこれをやるのは俺一人でいい」
依頼はラオシャンロンの討伐。
例え虫の息でも生きているのなら殺さなくてはならない。
ラオシャンロンとは言え、見るも無惨に傷つき、弱り果てている生き物を更に傷つける様な真似をリーアにさせたくなかった。
「じゃあな…行ってくる」
そう言ってリーアに背を向け、俺は歩き出した。
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