エピローグⅣ

2/7
451人が本棚に入れています
本棚に追加
/149ページ
 砦はほぼ全壊。 死者、行方不明者は砦の崩壊による瓦礫の山により正確な数は不明。 だが少なくとも二百人以上の人間が死んだ。 結果で言えばラオシャンロンは生命活動を停止し、人類史上初の討伐という功績を歴史を刻んだ。 しかし砦の事実上の破壊と多数の死者を伴ったこれを勝利と呼べるかと問われ、素直に首を縦には振れないだろう。 実際はぐれてからアレスとカリス、鈴の連れである清十郎を見る事はなかった。 彼らの遺品を探そうと思い片っ端から死体を調べようとするが、全て確める前に日が沈み中断せざるを得なかった。 砦内はいつ崩落するかもわからないので、内部では休まず今はエリア五の一画にギルドから支給された簡易的テントを建て、皆休んでいた。 仲間内の死亡者を含む行方不明者の報告をギルドナイトにし終え、テントに戻ろうとするが同じ様に辺りに乱立するテント群から自分達のテントを探すのには骨が折れた。 ようやく戻るとテントの中央に肉焼き用の小型焜炉が灯火代わりに使われてはいたが、それでも灯りは十分とは言えず薄暗かった。 「同じテントばかりで探すのが大変だった」 そう言うと手近な道具を積める木箱に腰を下ろした。 「ご苦労だったな」 焜炉で水しかない鍋を温めていたジェフはそう一言だけ返した。 リーアとセレナはギルドから食料を貰いに行っているらしく、テントには鈴や吹雪が居たが、返事もせずただ黙り込んでいた。 この家業をしている以上仲間の死は付き物である事は彼等もわかっているだろう。 だがそれだけで割り切れるものではない。 今は何も言わずそっとしておくのが一番だろう。 俺はジェフの晩飯の仕度を無言で見つめる。 忙しなく動いている奴の手を見ていれば気が紛れる気がしたが、やはり簡単に頭から離れるものではなかった。 組んだのが一度だけとは言え、知り合いお互いに名を呼べばもう他人ではない。 「必ず見つけてやる」 そう小さく呟いた。
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!