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日は完全に沈み、辺りは闇に包まれる。
日中の雨が嘘のように空には月と星が爛々と輝いていた。
「ルーヴァス、何故フロストを確保しない?」
低く掠れた声はルーヴァスと呼ばれた男に投げかけられた。
声の主はガンナー仕様のディアブロUを全身に纏った三人の内の一人、ロックイーターを担いだ初老の男だった。
彼等はフロスト達のテントからほど近い位置にてその動向を探っていた。
彼等の目的はあくまでフロストをイノセントへと連れ戻す事であり、戦闘が始まって接触が困難な先ほどとは違い、いつでも接触できる状態であった。
仮にフロストが抵抗したとしてもギルドナイトである彼等にすればその制圧など容易い事だろう。
だが、ルーヴァスと呼ばれる青年はそうしようとはしなかった。
ただ彼は無言でフロストの後ろ姿を見つめていた。
「ラオシャンロンが死んで夜になり、あれが来るのはすぐだぞ」
キャップに隠れた素顔は窺い知れないが、険しい表情であろう事は他の三人に容易に想像がつくだろう。
「…確かに奴を連れ帰るのが使命だ」
ここでようやくルーヴァスは口を開いた。
「フロストがどの程度か、私はまだ知らない」
遭遇自体が奇跡的なリオレウス希少種の素材を使ったシルバーソルシリーズは月光を浴び鈍く輝く。
「連れて帰るほど価値のある男か、私が判断する」
一方的に突き放す命令形の言葉に、ロックイーターを担いでいた男は反論もせずただ黙って了解と頷いた。
「久しぶりの対面を邪魔するほど私は野暮じゃない…喜べよ赤氷」
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