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泣きながら抱き寄せる母の顔を覗き込む。
{お母さん?大丈夫?}
抱きしめている。母の手に(ギュッ)と力が入る。
{ごめんね。貴美。}
母は父の暴力を止める事が、出来なかった事に後悔の念いが、いっぱいだったのだろう。
{うん。大丈夫。痛くなかったよ}
腫れた顔で強がった自分がいた。
気を失い、殴られた痛みが分からなかった。
翌朝、父を睨みつける。
父は何事も無かったかの様に仕事に出かける。
少し時間を置いて母と妹も出掛けた。
母{仕事に行ってくるけんネ。美樹?兄ちゃんにバイバイは?}
母に抱かれている妹は小さく手を降った。
「バィバィ」
独り、家に残された自分。急に寂しくなり、大声で泣いた。恐怖と痛みと寂しさに。
泣き疲れて眠る顔に冷たい物が当たる。
目を覚ます自分。
そこには、父が居た。
{すまん。貴美}
僕の顔を見た父は自分が何をしたのか思い出したのだろう。
その父の目に涙を見た。
それから、何日か過ぎて
僕の傷も癒えた頃。
父は酒を口にした。
あの時の恐怖が甦る。
父{大丈夫、二度とせんけんのf^_^;}
母{お父さん?二度とごめんですよ。}
父{分かっとる}
僕は、その言葉を信じた。貴美{ねぇ、ねぇ?お父さん?ドラえもん見てもいい?}父に問い掛ける。
父は何かを我慢しているのか。
小さく頷く。
テレビからはドラえもん音頭が流れる。
僕と妹はテレビの前に釘づけ。
後ろから母の声。
{ご飯よ}
テレビに目線を向けながら席に付く。
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