小さな自分

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恐怖に怯えしゃがみ込む母。 僕は、父にされるがまま。 大声で叫び続けた。 {助けて!お母さん!助けてお母さん!!} 母は、僕の叫び声を聞いて我に帰った。 父を押し退け。 僕の手を無我夢中で掴み。妹を抱き抱え。 裸足で外に飛び出す。 どれくらい走っただろう。気が付くと見知らぬ公園に立っていた。 赤く焼けた唇が痛む。 {おいで} 母が手招きをする。 近付く僕に冷たい手が当たる。 (母の手?) 公園の小さな噴水で手をずっと冷やしていたのだろう。 僕の唇にそっと手を添える。 母は大丈夫?大丈夫? 泣きながら、何度も何度も尋ねてくる。 唇は腫れて言葉を出せない 小さく頷く。 母は声を殺し、泣き始める 妹はキョトンとした目で僕を覗き込む。 涙が止まらない。 自然と僕の顔は夜空を眺める。 三人で公園のベンチに座りしばらく沈黙が続いた 母は思い悩んでいたのだろう。 僕の口が少し開いた。 {お母さん、帰ろう} 妹は母に抱かれ指を加えて眠っていた。 冷たくなった母の手を握り家路へと歩く。 恐る恐る部屋を覗き込む。 僕たちが階段を登る音が聞こえたのか 父は土下座をしていた。 {すまん。すまん。}と 酔いが覚めたのだろう。 母は黙ったまま4人分の布団を敷き。 眠りに着いた。 父の暴力から、解放される事なく何年か過ぎていった。 僕は小学校三年生 3度目の夏休みに事件は起きた。
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