第一章 第二話

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数年後、とある家で。 「おい!……何かの冗談だろ!? そんなもの持って…。 ……何とか言えよ、大気!!」 リビングらしき部屋で叫んでいるのは、30過ぎくらいの男性。 どちらかと言えばひ弱で、学者か何かで生計を立てているのだろう。 その男性に対峙している、大気と呼ばれた少年。 こちらはもうそろそろ年齢が20に届きそうな風貌で、どちらかと言えば青年に近いと言える。 「大人しくこれを渡さないからこうなるんだよ、父さん。」 そう言いながら、大気は懐から虹色に輝く宝石のようなものを取り出した。 その宝石を見た途端、男性の顔色が変わる。 「そ、それは……! 禁断のクリスタル! なぜお前がそんなものを!?」 「そんなこと。 僕が【黒い歴史】の一員だからさ。な、父さん。」 大気の手の平で虹色のクリスタルが輝きはじめた。 大気の持つ虹色の宝石の光が男性の体を包みはじめた。 男性は体を震えさせながら赤い宝石と黄色い宝石を取り出した。 「最後の足掻きか? 見苦しいな、アンタ。 元はと言えば全てアンタのせいなんだぜ。」 急に口調が変わり、威圧感が出始めた大気に震えるだけの男性。 「ふ…フン!その前にお前とその光をどうにかすればいい!」 それを聞いて大気は笑う。 「さっすが学者だな! ちょっとワクワクしてきたよ。 でももうおしまいなんだ! これ、なーんだ?」 またもや口調がもどり、おどけながら大気は透明な石を取り出し、見せる。 「それは………無色で【還元】………。」 男性はがっくりと項垂れ、光っていた石が光を失う。 そして、虹色の光に包まれた男性の目から生気が失われ、赤色のクリスタルを手にとる。 「さようなら、父さん。永遠に。」 ゆっくりと倒れていく男性を尻目に、立ち去る大気。 「これ、無色のクリスタルじゃあないんだけどなぁー。 馬鹿だね、加賀龍紀。 じゃーねー!」 緑色の「クリスタル」【移動】を使って、大気は家から消え去った。
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