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―――昔の事は覚えていない、いっぱしに家族は居た気がするが大して顔も合わせていなかったからやっぱり覚えていない。
この名前を付けてくれたのは、今居るグループの人達だ。単純な理由だった、全身が灰色の子供。だから、『灰児』。
単純だけど、自分には一番ピッタリの名前だと、昔付けて貰った名前を捨てた。いとも簡単に捨てた、この世界に生まれてこの町に捨てられたのと同じ位あっけなく…捨てた―――
「さてと…いいかハイジ、リーダーの話じゃこの倉庫にナイスなお宝があるらしいんだがよ」
二人のドロボウが立つのは、港の倉庫で最も古い倉庫だった。
扉が殆ど錆びており、レンガが所々崩れかけていた。
「まぁ、見てのとおり正面口しか扉が無い。という訳で真正面から堂々と入らせてもらう」
「………」
一番古い為、セキュリティも全く施されていない。その証拠にアキラが扉を強めに蹴っただけで、簡単にぶち破れてしまった。
「…こんなトコに本当にあるんですか?」
お宝が何かはハイジには知らされていない、にしてもこれは無用心にも程がある。
「そりゃもう、とびっきりのとびっきり。今までで一番のお宝だぜ」
「…にしては、見張り一人居ないなんておかしくないですか?」
正直なところ、不安要素だらけの今回の仕事。嫌な予感がするなんてもんじゃない、今日ここに来た事でこれからの人生そのものが変わってしまう気がする。
「まぁ、それだけソイツがこんなトコにあるなんて誰も思わねーんだろ?」
アキラは倉庫内の奥の扉へと向かう、今度はまともな扉らしく電子ロックがかかっていた。
それも全て承知しているかのように、パスワードを入力していく。それにもハイジは違和感を覚えたが、それだけ用意周到だったのだろうと思考を停止させた。
「現に俺も、こんなもんがココにあるなんて思わなかったしよ…」
pipipi………
と、電子音を鳴らして扉が開く。実際にソレを見るまでは、ハイジもそこにそんなモノがあるなんて夢にも思わなかっただろう。
「こんなトコに、こんなお宝があるなんてよ」
そしてハイジもその部屋を覗き込む。
誰もがあると思わない、ソレの存在を知る――
「……嘘、だろ」
――灰色のDS。
そこにあったのは片膝をついた巨大な機体、灰色に塗装されたDSだった。
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