序章『鼠』

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2319年3月19日 統京都13番区画 路地裏   人工的に作られた空の下―――少年は、夢から目を覚ました。   目を擦る間もなくパッチリと、いちいちそんな事をしてる暇が無いから一気に開いた。 何かが空気を切り裂いて、少年が寝ている場所に振り降ろされる音。   鈍い、衝撃音。   その音が鳴り響いた瞬間、寝ていた少年は――空で寝ていた。 『……⁉』 衝撃音出した本人、鉄パイプを目の前で寝ていた少年に振り降ろした男は驚愕する。 少年がいきなり空に飛び上がったのもそうだが、そのまま後ろで控えていた仲間の悲鳴が聞こえたからだ。 『⁉⁉⁉』 別に初撃が外れても構わなかった、相手が起きた時には3人掛かりでボコる予定だった。 だが振り向いた時には仲間はおらず、初撃を外した時にはもう男は一人だけになっていた。   「お兄さん達さぁ、人の寝込み襲うなんて趣味悪いよね」   ちょっと遊ぶ金が欲しかっただけ、そんな時にたまたま寝ている少年が居て――たまたま鉄パイプを持っていただけだった。   「ていうか、相手が悪いよね」   目の前に立つ少年、今からこのチンピラをコテンパンに叩きのめすであろう少年。 その少年の姿は、全身が灰色だった。 髪の毛も、服も靴もニット帽も――その瞳でさえ『灰色』だった。 少年が体を大きく捻ってから放った拳が、だんだん近付いてくるのをその瞳に写しながらチンピラは思う。   …あぁ、ネズミみたいだ。   思うのと同時にチンピラの意識は飛び、その体も路地裏の奥へと飛んだ。   「まぁ、この場合は運が悪いのか」   服についた埃を振り払うと少年は反転して、何事も無かった様に路地裏の入口へと歩きだす。   「ふあぁ~あ、眠ぃ」   折角見つけた昼寝スポットがチンピラ達の寝床になってしまった為、少年は新しい寝ぐらを探す為に町の中へと消えていく。     今日も人工的に作られた空には、雲一つ太陽すら存在しない―――
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