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一日前 深夜25時55分 統京都10番区画
『ターゲット、確認しました』
ビルとビルの間を、小さなエンジン音が通り過ぎていく。
それは一つだけではなく、幾つものエンジン音が連なってある場所に向かっている。
「いいか、全機指示があるまで手は出すなよ」
人工的に作られた月明かり、その先に照らされ姿を現したエンジン音を鳴らすソレは…“巨人”
小さなビルよりも大きい体躯のソレは、人の姿を模した巨大な機械だった。
その周りに二体、更に離れた場所では同じ様に三体編成で動く巨人の姿がある。
まるで闇夜に紛れるかの様に全身黒の塗装、音も起てず静かに滑る様にして移動する姿はまるで忍者だ。
「じゃなきゃ、死ぬぞ」
その一団の中、一切無駄の無い動きで周りの機体を統率する者が居た。
機体の中から若い声で各機体に通信をしながら、慣れた手つきで機体を制御し操縦をこなす男。
黒の背広に白のシャツ、黒のネクタイとまるで新入社員のサラリーマンみたいな格好。
ここがコックピットでこれから戦闘に向かう様には見えない男が、機体モニターに写る周囲の様子と遠くにそびえ立つ灰色のソレを睨みつける。
「俺以外は、な」
彼等が向かう場所、ビル群を抜けた公園のある開けた場所にソレは立っていた。
灰色の巨人…
周りには薙ぎ倒された木やぺしゃんこになった車、巨人の暴力の跡が生々しく残っていた。
『全機、配置完了しました』
灰色の巨人を前に、黒の巨人は立ち止まる。よく見れば反対側にも黒い機体の姿が、計9体の黒い巨体がたった一体の灰色の巨体を取り囲む。
夜の街に、やっと夜らしい静けさが戻ってくる。
「始まって早々なんだが…」
機体の中から聞こえる訳でもないのに、リーダー格の男は灰色の巨体に向かって喋りかける。
まるで、前から知っている友人にでも喋りかける様に馴れ馴れしく。しかし、次に出た言葉は
「死んでくれ」
そんな生易しいモノではなかった。
……その夜は、それはそれは盛り上がった、
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