『白亜』

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統京都統括本部 DS技術開発局    とっくに日を跨ぐ時刻を越えたというのに、ラボの中では引っ切り無しに音が鳴り白服がせわしなく動き回る。  その広い空間は工場というにはあまりにも綺麗、いや白過ぎた。真っ白な空間で動き回る白、しかしその空間の中心には全くの正反対のモノが置かれていた。  黒のDS。  先程なつひこ達が乗っていた機体全てが、このラボに置かれていた。その機体をラボのスタッフが駆けずり回って修理する。  特に損傷の激しい3機は、半壊状態でお天道様が顔を出すまでに終わりそうにない。 「にゃ~🐱またこっぴどくやられたね~」  その様子をラボの最上階に位置する部屋から、野次馬の様に眺めている白衣の男がいた。 「でも、流石だにゃん🐱アレ程の戦闘で傷一つつけないなんて、ん~…なつひこクン、最高ォ~」   …気持ち悪い。   『神出(かみで)局長、統括本部総帥より通信です』 「ハーイ」  神出・E・マーサー  この男見てくれは不精髭の、ただの気持ち悪いオッサンなのだが…  実の所その正体は、このDS技術開発局の現局長なのである。あの黒いDSを造り上げたのも、ほとんどこの男の力といっても過言ではない。 「もしもしもっしー、どったのん?」  ただキャラクターに難があるだけだが… … 「ニャ🐱頑張ってるみたいね、あのコ。心配しなくてもスグに慣れるさぁ~、だってそうやって設計されてるんだからね」 … … 「それよりも、さ」 … 「あんまり調子こいて、私の『シンデレラ』に傷をつけるなよ」  一瞬だけ神出の声が低くなった気がしたが、 「ニャ🐱次の作戦は万全を期して挑もうねぇー」 …  何事も無かった様に通話が切れ、そのまま神出は反対に向き直しラボを上から見下ろす。 「もう少し…もう少しで君の身体が完成するよ、あぁ待ち遠しい…もうすぐ、もうすぐだからね…」  何事かを呟く神出の、ガラスに写しだされたその表情は… 「私の可愛い『シンデレラ』」    今までで、一番邪気のある笑顔だった―――
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