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3月19日 昼 統京都0番区画 統京タワー
時刻は、少年少女が目覚めた時間に戻り――
統京都の中心、0番区画にソレは存在する。
統京全土を覆い尽くす人造の空を支える為に設置された巨大な支柱、どこまでも突き抜ける高さを誇る統京最大の建築物。
それが、この…
「…統京タワーっすか」
統京タワーの中程に位置する66階展望室、ここから都市を見渡す事が出来るとあって平日でも観光客で賑わっている。
「いやいや、それにしても本当に不思議な光景っすよねー。空が空で覆われてるなんて」
そこから都市中を見れる様に配置されている望遠鏡の前で、百円玉を山積みにして陣取っている若者が居る。
「つうか、俺たちが空に閉じ込められてるっつーの?」
彼の周りには誰一人居ないのに、誰かにひたすら喋りかけている。
「あー、もう飽きた…」
かれこれ3時間は覗いていたんではなかろうか、普通ならとっくに飽きてて当然なのだが、男はエレベーターに乗り込み降りてゆく。
pipipipipi………。
「もっしー?ハヤトの携帯ですけど、何か?」
透明な特殊強化ガラスの中を降りていくエレベーター、雲一つない人工の空から逃げる様に落ちていく。
「確認はとれたっすよね?じゃ、明日決行って事で」
pu- pu- pu- ………
空が遠ざかり、ハヤトの眼下に地上が見えてくる。比較的周りにビル等が無い場所に位置しているが、それでもコンクリートの地面は嫌でも現実へ引き戻してくれる。
Chin-!
「ま、どっちにしても自然じゃないんだけど」
そんな皮肉をこぼしてタワーの外、観光客用の広大な駐車場へと向かう。
「いつまでもこんなまがい物の世界に、閉じ込めていられると思うなよ…」
そう誰ともつかない誰かに呟くと、おもむろにさっき持っていた携帯を後ろに投げ捨てる…
Gusyaa…‼
と、突然携帯が潰れる様な音と共に壊れる。それだけではなく周りのコンクリートごと巨大なナニかに押し潰されていた。
「そろそろ奴等の喉笛、噛みついてやろうや…」
ハヤトが、駐車場のど真ん中で立ち止まる。すると目の前の空間が歪み、ソコに巨大な純白の機体が出現した。
「この、牙で…」
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