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「色々な噂が回っていたとは思いますが、 今日から女子が一人転入してきます。」 美久は廊下に立って、 担任の教師が自分を紹介しているのを 沈んだ気持ちで聞いていた。 教室内に「おぉー」という歓声が上がるのが聞こえる。 『紹介なんかしなくていいのに…。』 美久は緊張で胃が痛くなってきた。 「じゃあ篠田さん、入って下さい。」 美久は深呼吸をして、 なるべく大人しく、目立たないように 慎重に教室に足を踏み入れた。 「…可愛いじゃん。」 「色白っ!」 生徒達が一気に沸き立つのが分かった。 どの生徒の目にも関心の色がうかがえた。 美久は心を落ち着けて、黒板の桟から粉まみれの白いチョークを取り出すと 小さく『篠田 美久』と黒板に書いた。 「しのだみくです。……よろしくお願いします。」 …………………。 クラスの全員が『そ、それだけ?』と言いたげな顔になった。 「…えーと、篠田さん? 篠田さんの事、何でもいいから自己紹介してくれる?」 教師が慌てて促した。 「……。」 「何でもいいよ! 好きな事とか。」 「好きな事は……」 美久はそれだけ言うとまた口をつぐんだ。 「………………。」 教室がザワザワとしだした。 「はいっ!きっと緊張しちゃってるんだな! 篠田さんとの仲は、これからの学校生活の中で、深めていくようにしましょう!」 教師は強制的にその場を締めくくった。 キーンコーンカーンコーン ちょうど、チャイムが鳴った。 「HRは終わり!日直、号令!」 美久は号令の後、空いていた前から二番目の席に静かに着いた。
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