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「なぁ、初音。俺はお前を身請けする事も……。お前に着物も仕立ててあげる事が出来ない。なのになんでこんな男に逢いたがる?」と誠一郎が初音に言う。
「誠一郎様は……。わっちのこの気持ちわかっていなしゃりませんか?」我慢出来なかった涙が頬を伝う。
「わっちは……。」と言いかけた口を誠一郎が吸う。
「そうだ。初音今日はお前に土産があるんだ。」と誠一郎は、色紙に包まれた物を初音に渡す。
開けてみると蝶の簪であった。銀の鎖細工が美しく揺れる姿がわいらしかった。
「嬉しい。」と言い。襦袢を着て鏡の前に座り髪を櫛で撫でて簪を刺す。
振り返って誠一郎を見て微笑む。
誠一郎は煙管に火をつけて一服をして楽しそうに初音を見ている。
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