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冷凍ケースの前で、ああでもないこうでもないと迷いながらアイスクリームを選んだ後、かごの上を覆っている涼しそうなパッケージに、高耶が満足げに笑った。
「こんなもんでいいかな」
そう言いながらもまだケースの中を迷っている高耶に、直江が苦笑した。
「別に一度に全部食べるんじゃないんですから、もういいですよ。あまり買いすぎても、冷凍庫に入らなかったら困るでしょう」
何となく物足りなげな高耶に、なくなったらまた来ればいいですよと言ってやると、そうかと頷いて笑ってみせた。その表情が可愛くて、くちづけたい衝動をどうにかこらえる。自分の笑顔が男に与える影響に気づかない高耶は、アイスのコーナーから離れながら、立ち止まったままの直江を振り返った。
「他に買い忘れたもんなかったっけ?」
はっと我に返り、考えてみるがすぐには思いつかない。にっこり笑って少し空いてしまった距離をつめながら、
「歩いていたらきっと思い出しますよ。冷房も効いていますから…もう一回りしませんか?」
「それもそうだな。ぐるっと見れば思い出すよな」
頷き返すと、直江が高耶の手から再びカートを引き取る。それを押しながら、いつもの微笑で笑いかけた。
「じゃあ、行きましょうか」
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