54人が本棚に入れています
本棚に追加
辺り一面、真っ灰色。
明も暗もそこには存在せず、床も天井も壁も、目で確認する事が出来ない。
灰色の世界。いや、部屋といったほうがいいだろうか。
異世界、異空間、異次元。
そんな表現がもっとも適切なこの空間に、宵闇の様な黒一色の服装を纏い、雪の様にまばゆい光沢をもつ銀髪を生やし、この場と同色の灰色の肌を持つ者達が、四人佇んでいた。
四人はそれぞれ、等距離で向かい合うように立っている。
大きいのか小さいのか、広いのか狭いのかも解らない灰色のこの場に、空気などがあるのかもわからないが、空間に声が響く。
「ね~え~ まだ始めないの~?」
その声は、子供のような背格好をした一人が言ったものだった。
「ケニスさんが……まだ……来ていない」
髪を足元に届くほど伸ばした一人が、いちいち区切った聞き取りにくい喋り方で注意する。
「あっ本当だ! 気付かなかった。なんだよあのオッサン遅刻かよ。人に散々、時間を守れとか、身嗜みを整えろだのエラソーな事言ってたくせにさぁ!」
どうやら、この四人はケニスという人物の登場を待っているようだった。
最初のコメントを投稿しよう!