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「……おかしくは、ないか?」
しばらく間を置いてから、不意に頭にフードを深く被った一人が口を開いた。
「今まで、神経質なあのケニスが遅れたことはない。ましてや、この集会を奴が忘れるはずもない」
あまりにフードを深く被っているため、その表情を窺うことができないが、どうやら考えこんでいるようだ。
「……あぁ!もう、苛々する。何がいいたいのさぁ!」
痺れを切らした子供の様な一人が、バタバタとじだんだを踏みながら怒鳴り散らす。
「……まさか、な。いや、なんでもない。しょうがない、ケニス抜きで集会を始めよう」
深くフードを被った一人が、集会とやらを始めようと言うと、皆がその意見に賛成した。
ただ一人を除いて。
「おい」
今まで沈黙を保っていた最後の一人が、口を開いた。
「野郎が何処にいるか、わかる奴はいるか?」
その声はとても荒々しく、低く響く。地面が震えたのではと、錯覚するほど威圧感。言ったのは筋骨隆々の大男のような一人。
「ケニスのことか? たしか、前回の集会で奴は日本に行くとは言っていたが……」
「日本だな」
フードを深く被った一人がそう言うと、大男のような者は振り返り、その場を去ろうとした。
「待て、どういうつもりだ?」
「そうだよ、どうしたのぉ?いきなりさぁ」
「まだ……集会を……行っていない」
三人がそれぞれ、その一人に声をかける。三人の呼びとめられた男はその場で立ち止まり、三人をその目におさめ、こう言った。
「腑抜けた事をぬかすのも大概にしろ」
その目は、鋭く獰猛な目だった。気高く、逆らえない瞳だった。恐れ、畏縮してしまう視線だった。
それに含まれた感情は怒り。
今まで押し止めていた分、力強く。まるで火山の噴火の様に、怒りの感情は噴き出していく。
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