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視線を浴びせられた三人は蛇に睨まれた蛙のごとく硬直し、立ち尽くす。
「この集会は、俺達の間では生死の確認の場でもあったはず。集会の欠席は死んだことと同義だったはずだ。それがなんだ、いないから先に始めようかだと? 呆けるにも程がある」
そう言って、目付きの鋭い一人がフードを深く被った一人の胸倉を掴み上げ、締め上げる。
掴まれ、締め上げられたままフードの人物は言う。
「……すまない。だが、奴が現れるにはまだ早過ぎる。仮に奴がすでに鬼になっていたとしても、我等を討ち滅ぼすほどの力を持っているとは到底……」
この言葉は言い訳。彼らが恐れる唯一の存在が再来した可能性の否定。
だったらいいなという希望的な仮定だ。
「……可能性は、零ではないだろう」
目付きの鋭い一人はそんな言い訳を一蹴し、握っていた手を放し、また振り返りその場を去ろうとする。
「あの神経質なヘタレを捜してくる。なに、もしも奴がまた現れたのだとしても、その時は……」
自らの身体を灰色の空間に溶かし、一人は言った。
「俺がまた、殺すさ」
言い終わった時、灰色の世界から一人がいなくなった。
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