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季節は秋。
並木たちが全員その色を変え、葉を散らせる今日この頃。ここ、日野山公園では落ち葉が風に舞っていた。
この公園の路肩。そこには花が置かれていた。
何故花が置かれているのか。
それは夏の終わりに、ここで起こった交通事故によって死んだ少年のための花だった。その少年は道路に飛び出した子供を助けるために犠牲になった。
道の端っこに、邪魔にならないようにひっそりと置かれている花。
そんな花を、物憂げな表情でじっと見つめ続けている少年がいた。
その少年の顔は、とても申し訳なさそうで、まるで自分のために嫌な思いをさせてないだろうかと心配しているようで。
この少年、名前は陽。
ある晴れた夏の終わり頃。
この場で死んだ少年だ。
しかし、彼は幽霊などではない。
少年はその日、この場で……
鬼となったのだ。
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