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人は死んだ後、その一生のバランスをとらなければならない。
悪行と、善行のバランスをとらなければならない。
それが、この世の掟にして定め。
善人は悪行を、悪人は善行を。
つまり。
善人は鬼に、悪人は神となるのだ。
陽は善人だった。故に死後、彼は鬼となったのだ。しかし、彼を取り巻く環境は特殊だった。
この世を管理するあの世の住人は、閻魔大王と絶対神の元に統率されている。そしてさらに閻魔の下には三人、絶対神の下には四人の死者の統率者が存在する。
そして閻魔の下に存在する三人は三鬼と呼ばれていて、三鬼は黄鬼、青鬼、赤鬼によって構成されている。
陽の前世は、その赤鬼だった。
そして赤鬼の称号は、この世のバランスを崩し、乱す存在を討滅できる者のみが、掲げることができる名だった。
そんな特殊な境遇にいる彼だが、今はある事情でなんの力も持っていない。
そんな彼は死んだことを除けば、目の前を歩いている人達となんら変わりのない存在だ。
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