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切なげに呟き俺の腕をぐいぐいと引っ張っていく。
え、ちょ、そっちは部屋じゃないぞ!?
あわあわする俺を完全に無視して、スズは部屋とは正反対の方向に向かっていった。
「ここって……?」
スズに連れて来られたのは、廊下の突き当たりにある小さな部屋。
中には布団やらシーツやらがたくさん置いてあり、薄暗い。
「……リネン室……」
「あぁ、聞いた事ある……、あう」
きょろきょろと辺りを見回してシーツを擦ったりして遊んでいると、急に背中を押される。
そのままバランスを崩して、俺は畳まれた掛け布団の中にダイブしてしまった。
「な、何するんだよっ」
体勢を変えて体ごと後ろを振り向くと、スズは僅かにムッとしたような表情を浮かべて俺に覆い被さってきた。
「ちょ、スズっ……」
「……ユキを…誰にも見せたくない。本当は……部屋に閉じ込めて、俺だけのものにしたいのに……」
寂しげな声が静かなリネン室に響く。
スズの黒い瞳に影が落ちているように見えて、何だか俺も切なくなってしまう。
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