129人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
プロローグ
冷たい雨が降り注ぎ、道行く人は厚着をし、白い息が窓を曇らせた。
石畳の道に響く雨音が、一つの民家から漏れ出る声をかきけしていた。
ベッドの上で陣痛に苦しむ女、その傍らには医者らしき男と助産婦らがいた。
「奥さん、頑張ってください」
医者が妊婦を励ました。
医者にしては若く、20代前半ぐらいの歳だろうか。
医者の励ます声が繰り返される、妊婦が医者の言葉に反応して呼吸を整える。
しばらくして、赤ん坊の頭が出てきた。
「赤ちゃんが出てきましたよ、あともう少しです!」
だが医者の励ましは、赤ん坊の上半身が出てきた辺りから消えた。
助産婦も医者も絶句した、妊婦の苦しむ声だけが部屋に響いた。
やがてそれは全ての部分が母親と分かれた。
医者は若く、そこまで経験があるわけでもない。
それでも、その赤ん坊は普通ではないことはすぐに分かった。
その赤ん坊は灰色に近い褐色の肌をしており、そして何よりも生まれたばかりで呼吸もしてるのに、産声をあげていなかった…
最初のコメントを投稿しよう!