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日が少し夕焼けに変わりつつある町中で、吐く息を白く染め顔を赤くした下北さんの表情はとても真剣で、とても綺麗な顔をしていた。
「…実さん。」
「っ!…“さん付け”はしないでくれ。…同級生だろ?」
「…そうですね。じゃあ実。…なんか急に馴れ馴れしくないですか?」
「そんな事はない!私は嬉しいぞ!」
そう言う実の笑顔は素直に綺麗だと思った。
「…ここが僕の来たかった場所、“プラント”です。」
「へえ~…花屋か?」
「う~ん…半分正解かな?ま、とりあえず中に入ってみれば分かりますよ。…多分。」
「…ま、入ってみようか。」
そうして、僕達はプラントの中へと入っていった。
店内に入るとすぐに僕達を迎えたのは、『いらっしゃいまし~♪』と書かれた看板をぶら下げた大きなサボテンで、人で言う胸元には“モンロー”と店員バッチも付けていた。
「…随分個性的な店だな…。」
「アハハ…。」
“モンロー”を少し怪訝な目で見ながらそうつぶやく実に、僕は乾いた笑い声を出すしかなかった。
何故なら、この店の個性はまだまだこんなものではないのだから。
「これは…。」
「アハハ…。」
笑うしかなかった。
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