意地悪男の憂鬱

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「で、ね!? 鈴木くんたら甘いもの苦手なのに、 一緒にケーキ屋行ってくれてさぁ~」 「‥‥へぇ。 馬鹿だな鈴木、こんな大馬鹿 甘やかしたってつけあがってブスの豚になるだけなのに」 「っ、ちょっ、郁那(かな)何様よ!! 最近本当に口悪い!!馬鹿!!」 「別に、元からだろ。 つーか用それだけならさっさとどっか行け、邪魔」 冷たく言い切って、睨むように彼女を見る。 幼いその顔を歪め、もう一度「馬鹿!!」と叫ぶと 短い髪を揺らして、俺の前の席を立った。 じっとその小さな後ろ姿を眺め、息を吐く。 黙って銀縁の眼鏡を外した。 はらりと落ちて頬にかかる、茶色い前髪がウザい。 荒々しくかきあげて、小さく舌打ちを零す。 すると目の前の席に、誰かが座った。 一瞬彼女かと思い顔を上げれば、知らない女。 男を誘うようにいくつも開けられたワイシャツのボタン、 染めすぎたせいか白髪交じりの巻かれた茶髪、 高校生とは思えないくらい老けてみえる顔に施された化粧、 この距離でもプンプン香る香水の匂い。 意識せずに眉を寄せたが、不運にも女がそれに気付く様子は無く。 天ぷらでも食べた後みたいにテカテカ光る唇を吊り上げ、笑った。
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