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「今日は、なんか…」
「何?」
「今日の怜は、いつもより落ち着いてる気がする」
「俺はいつも落ち着いてるよ」
「うん…そうだけど」
彼女は目を伏せた。
「こないだの印象が強いんでしょ」
そう言うと、ほんのり頬が赤くなる。
「激しかったもんね」
そう言ってクスクス笑うと、なんとも恥ずかしそうだ。
「怜は、付き合った女の子全部に、こんな感じだったの」
「こんなって何」
「今あたしがされているように、他の娘も」
「……なんでそんなこと」
少し胸が痛くなった。
「なんでかな、気になって」
「過去には興味ないよ、俺の過去も、雪絵ちゃんの過去も」
大事なのは、今どう思っているかだし、と言ってタバコに火を付けた。
「…じゃあ、怜は」
彼女は真剣に聞いてくる。
「本気で人を好きになったこと、ある?」
「………それは、どうかな」
あるよ、と言えない自分が歯痒かった。
今までで本気になったのは、雪絵ちゃんだけだ、と。
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