右手と左手

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自分の右手が、彼女の唇のように思えてくる。 こんなこと、できたらいいなと思ってたけど、それが叶うなんて。 「雪絵ちゃんて、ホントに…」 なぁに、と艶っぽく聞く彼女。 「気持ちいいことが好きなんだね…」 うん、そうかもしれない、と返ってくる声。 「怜とするの、好き…気持ちいいから…」 俺を好き、と言わない彼女を、哀しいほど愛している自分が可愛いと思えてしまう。 更に、いじめたい。 「入れてみてよ、指を」 「……入れるの」 「どんな声になるか、早く聞きたいよ」 うん…と言いながら、彼女は、はぁ、と息を吐く。 「ん……」 彼女の恥態を想像して、しごく針の先から液が漏れてきた。 「あぁっ、怜…!」 「気持ちよさそうだね」 はぁ、はぁ、という吐息が、甘く俺を包んでいく。 もっと狂ってよ、俺のために。 君が好きなんだ。 感じている君が、一番好きだ。
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