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今日も、二人。
町中を歩く。
お互いに、お互いだけが輝いていた。
歩いているだけでも、心の中を感じられるような親近感。
「今日はなんだか、雨降りそう」
雪絵ちゃんが呟く。
空を見ると、確かに曇っていた。
「ほんとだ、降りそうだね」
ね、と言って彼女はまた空を見る。
その横顔を見ていたら、胸が詰まりそうになった。
ふいに抱き締めたくなったけれど
少し自分を抑えた。
彼女の瞳は、少しだけ遠くを見つめているような気がして、俺は唇を噛む。
「ねぇ」
彼女は俺の方を振り向いた。
「雪絵ちゃんの部屋、見たいな」
彼女は大きな瞳で俺を見つめた。
でもすぐいいよ、と言ってくれた。
二人で、横浜線の駅に向かって歩く。
何も聞かない彼女。
ただ彼女を見つめる俺。
二人で切符を買って、改札に入る。
「今日は、誰もいないんだ」
俺にだけ判るような小さな声で、彼女は呟いた。
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