6307人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうぞ」
初めて入る、彼女の部屋。
入って俺はびっくりした。
一面、青だった。
青いベッド、青いカーテン、青い小瓶たち、青のポプリ、青いランプ。総てが、ブルーで埋め尽くされている。
「青い」
俺は呟いた。
彼女は、少し深い青が好きなの、と言って笑った。
彼女の笑い方は儚く、今にも消えてしまいそうだった。
この青の中に、何がいるんだろう。
彼女の心の中に巣食う、哀しみの悪魔がいるの?
「これじゃあ、寂しくなるよ」
俺は呟いた。
「青は、人の感情をマイナスにするんだよ」
彼女は大きい瞳を潤ませて、俺を見た。
「そうなんだ」
彼女はそう言うと、目を伏せた。
俺は心の奥に、何か…
ちくり、と針で刺されたような心持ちになって、彼女の痛みや哀しみのうち、少しでも俺にくれないだろうか、と思ってみたりする。
「雪絵ちゃんの何が、そうさせるの」
俺が訊ねると、彼女は
「分からない」
そう言って薄いブルーのカバーが掛かったベッドに腰かける。
最初のコメントを投稿しよう!