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でも、セックスは必要なことは確か。
矛盾する気持ち…
彼女を感じるために、愛するためには、この行為無しでは何も始まらない。
ふと、胸を舐めながら彼女の歪んだ顔を見た。
きらりと光る、涙…
「…どうしたの」
俺の声に、なんでもない、と返してくる彼女。
細い指が、顔を覆う。
俺は、彼女の服の乱れを直した。
そして、ぎゅっと抱きしめた。
「怜」
えっちしないの、と聞く彼女。
涙で瞳は濡れて、艶っぽい。
「……どっちでもいい。こうしてるだけでも、気持ちいいから」
肌と肌の温もり。
彼女の肌は柔らかくて、花のような香りがする。
頬に光る雫を、唇で吸い込む。
「やだ、しょっぱいよ」
しょっぱいね、と答えて俺は彼女のベッドに横たわる。
彼女は、俺の腕の中だ。
泣いている彼女を、髪を撫でながら眺める。
愛しいひと……
…………。
こんなに人を好きになるなんて……
俺…どうしたらいいんだろう。
繋がってるはずだ、心も、体も。
なのにこの歯痒さは、いったい何だ?
雨の音が、強くなっていく。
ぽつぽつ…と、ベッドのすぐ左隣にある窓に、雨の跡が残る。
彼女をまた抱きしめたら心臓の鼓動が伝わってきた。
瞼を閉じると、二人、溶け合っているようだった。
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