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「恋に恋しとらんと?」
「……………」
俺は黙ってしまった。
初めて、本気で愛してしまった、そのことに舞い上がっているのかもしれない。
「夢中になれば、まわりば見えんようになるけんが」
彼女の気持ちば、どこにあるか…なんで怜が満たされんのか気づかんと別れることになるぞ、と友は言った。
俺は、ありがとう、と言う。
こいつとは、ナンパばかりしてきたけど、やっぱり心のあるやつだ、と思う。
こいつも沢山の恋を、してきたのだろう。
幾つもの恋……
今の恋にも、終わりがあるのだろうか。
考えたくない。
彼女が、俺の腕から離れていくなんて。
他の男に抱かれてしまうなんて……
俺は、なんて……
自分勝手なんだろう、と思った。
彼女を、離したくない。
こんなに好きなのに…
足りないんだ。
俺の乾きを埋めて欲しい。
雪絵ちゃんしかいないんだ…
燃え上がる炎の中に自ら飛び込んでいく蝶のように、このまま雪絵ちゃんと二人でどこかに消えてしまいたい…
二人を別つものがあるなら、せめてその前に二人で世界から消えてしまいたい……
そんなことを考えては、また独り、部屋で煙草をふかしていた。
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