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峠を抜けた頃には既に日は昇りきり、身を切る様な寒さは消えていた。
それから走ること約20分、目的の神社へと到着。
そこは古くからの伝統を引き継ぐ由緒正しい神社であり、全国からの参拝者も多く。
元旦とは言え、まだ早朝にも関わらず人で賑わっていた。
「すごい人……」
「早めに来たつもりだったけど、ちょっと甘く見てたな……」
僕達もバイクを降りると参拝者の中に入っていく。
しかし、その人混みの為、思う様に列は進まず、牛歩の勢いだった。
そんな中ようやく初詣を終えた時には、一時間近くが経とうとしていた。
「疲れた~…」
そう肩を降ろして、げんなりする僕に向かって美雪は苦笑いを浮かべた。
「まあまあ、苦労したんだからそれなりの御利益はあるよ、きっと」
「だといいけど、それより美雪、お前、あの時何を願ってたんだ?随分と長かったけど」
美雪は肩をくすめ、知らないとばかりにそっぽを向いた。
「さあ~、何でしょう?」
「いいだろ、教えてくれても……」
「お願い事は他人に教えると御利益無くなっちゃうんだよ。
だからダ~メ、言わない」
「ふーん……、まあいいさ。
それより、何か食べて帰ろっか?朝ご飯まだだろ?」
「うん、そうしよ。
でも元旦で、朝早くだよ?お店やってるのかな?」
そんな他愛ない会話をしながら、僕達は手を取り合い石段をゆっくりと降りていく。
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