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「ゴメンね凜……」
電車の中、美雪は僕の形に頭を乗せ静かにそう呟いた。
「気にするな、なーにまた遊びに来ればいいさ。
正月だって直ぐに来る、その時に沢山遊べばいい、だから今日はゆっくり休みな?」
「うん……そうだね……。
お正月にはちゃんと治して、おせちとかもしなくちゃ」
(大丈夫かな?本当に具合悪そうだ……病院に連れて行った方がいいかも)
「なあ美雪、明日病院行った方がいいんじゃないか?
今もまだ頭痛いんだろ?一応検査したほうが……」
「大丈夫よ、もう殆ど痛くないし、きっとさっきのも突発的なものだったのよ……。
だからもう心配いらないわ、ありがとう」
「……でも」
「し・つ・こ・い、私が心配され過ぎること、嫌いって知ってるでしょ?
だからもう心配しないの、分かった?」
「分かったよ……」
駅から歩く事、数分……。
¨水崎¨と名札の掛かった豪邸が姿を現した。
ここら一帯で水崎家と言えば、大地主で美雪は水崎家のご令嬢である。
「見送りありがとう」
「いえいえ、私こそご令嬢とご同行出来て光栄ですよ。美雪お嬢様」
「もう、やめてってばその呼び方!」
「ははっ、ゴメンゴメン。
じゃあお休み、ゆっくり休みなよ」
僕はそう言うと再び駅へと向かおうとしたが、袖を引っ張られ振り返った。
「ん、どうした?美さ……ん」
「ん……私からのクリスマスプレゼント……。
今日は色々楽しかったよ、ありがとう凜、じゃあお休み……」
美雪は手を振りつつ、玄関へと入って行った。
(柔らかかったな……美雪の唇……)
僕はいきなりの事に呆気に取られ、フラフラと夜道を歩いて帰って行った。
そうこの時は知る由もなかった、この頃既に美雪に病魔の手が伸びていたのを……。
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