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クリスマスから6日……。
あの日から美雪とは遊びには行っていなかった、それは勿論2人の日程が合わないのもそうだが。
美雪の体調を心配してというのもあった。
あの日以来、特に頭が痛いと言ってくる事はなかったのだが、時々美雪を見ていると無気力というのだろうか……。
何かこう、何かに意識を集中するわけでもなく、ただ黙ってどこか遠くを見ている感じがしていた。
そんなわけで、今年最後の日である12月31日に至っている訳である。
目の前のテレビでは新年に向けてのカウントダウンが10分を切っていた。
僕は立ち上がり、カウンターに向かうと電話を取り番号を慣れた番号を押していく。
『もしもし』
何回かのコールが聞こえ、聞き慣れた声が僕を迎え入れた。
『凜?どうかしたの?』
「いいや、何となく声を聞きたくなって、それより元気そうだね、体は大丈夫?」
『大丈夫って何が?』
「何がって……、いや、最近何か妙に元気ないように見えたから心配だったんだ。
だから今日も部屋に呼ばなかったんだよ」
しばしの沈黙をはさみ美雪は口を開く。
『そうなんだ……、私全然そんなつもりなかったんだけど……。
今日、部屋に呼ばれなかったのも、てっきり凜に見捨てられたから、だと思ってたよ』
「なんだよそれ……、自分の事なんだよ?気付かない訳はないと思うけど……」
そう会話を続けた僕だけど、その時、頭の中ではかなりホッとしていた。
日が経つに連れてあのクリスマスの夜、美雪が頭を痛いと言ったのは、何か病気があるから……そう思っていたから……。
『そうだ、ねえ凜。明日の朝予定ある?』
「んー、いやないけど」
『だったら一緒にお参りして来ようよ』
「そうだな、じゃあ迎えに行くわ」
『うん、お願い』
その時、後ろのテレビから歓声が聞こえ新年を迎えた事が分かった。
「おっと、年が明けたみたいだな。
それじゃあ、美雪明けましておめでとう。そして今年もよろしく」
『うん、こちらこそよろしくお願いします』
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