第五章 躍動

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そしてオルスカは自分の足元にある扉を見下ろした。 オルスカもこの扉については半ば諦めていたためにそれほど重要視していなかったが、今更になって詳しい調査をしていなかったことを後悔していた。 失敗の許されない事象を目の前にし、資料も対策も皆無な現状に、絶望感すら覚えた。 しかし、雷帝 レイン=シリウスといえば、過去、現在を通じて最強のノア。 そのノアが残した歴史的遺産に、時変者との戦闘の現状を打破するような望みをこの扉の中の何かに見いだしているのもまた事実である。 「ふむ…これは厄介なことになったな…」 オルスカはそのままその場にしゃがみ込み、二層目の窪みに手を置いた。 この状況では発源の力を流し込むことすらままならないため、ただ触れただけであった。 滑らかな肌触りに、劣化も見られない。 特別な発源をかけられているにしても、これほどまでに効果が持続するものは、この島を囲う結界もそうだったが、現在のノアの持つ発源では無理があった。 その事から推測しても、どうもノアの発源の力は衰えてきているようだ。
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