第六章 因果の迷宮

2/68
前へ
/409ページ
次へ
ここは荒れ果てた大地。 木々はおろか、生命の存在すら許さないほどに何もなかった。 大地は渇水してひび割れ、緑など無い。 ただ赤みのかかった黒色の雲が、その先にある太陽に照らされて、悲しく漂っている。 そんな死んだ大地に、空は立っていた。 自身の感覚はほぼ無いに等しい。 意識も朧気なまま、揺らめく大地の上で立っている。 (……由真…?) 意識的にしろ、無意識的にしろ、その名前を頭に浮かべた瞬間、空はこの光景が夢の中のものなのだと悟った。 以前にも夢の中にいて、夢だとわかる夢は見たことがある。 しかしこの夢は、空に奇妙な感覚を与えていた。 懐かしさ。 この光景を見たことのない空がそう思うということは、理由は一つしかなかった。 「…楽園が…聞いて呆れるよな…」 そのことを自覚しながら、空はそう呟いた。 頭がはっきりとしない。 おそらくは目覚めたときにはこの光景を覚えていないだろう。 そこまで考えると、空の体は光に包まれていった。 自らの大地を残したまま…。
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21775人が本棚に入れています
本棚に追加