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ここは荒れ果てた大地。
木々はおろか、生命の存在すら許さないほどに何もなかった。
大地は渇水してひび割れ、緑など無い。
ただ赤みのかかった黒色の雲が、その先にある太陽に照らされて、悲しく漂っている。
そんな死んだ大地に、空は立っていた。
自身の感覚はほぼ無いに等しい。
意識も朧気なまま、揺らめく大地の上で立っている。
(……由真…?)
意識的にしろ、無意識的にしろ、その名前を頭に浮かべた瞬間、空はこの光景が夢の中のものなのだと悟った。
以前にも夢の中にいて、夢だとわかる夢は見たことがある。
しかしこの夢は、空に奇妙な感覚を与えていた。
懐かしさ。
この光景を見たことのない空がそう思うということは、理由は一つしかなかった。
「…楽園が…聞いて呆れるよな…」
そのことを自覚しながら、空はそう呟いた。
頭がはっきりとしない。
おそらくは目覚めたときにはこの光景を覚えていないだろう。
そこまで考えると、空の体は光に包まれていった。
自らの大地を残したまま…。
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