第六章 因果の迷宮

4/68
前へ
/409ページ
次へ
「どこか痛いところはない…?」 現在の状況を認識した空に対して、由真は優しくそう尋ねてきた。 「…右腕がちょっと痛いだけだけど…」 由真のいつもとは違う様子に少し戸惑いながらも、空はそう報告した。 普段の空ならば隠していたのかもしれなかったが、今のこの痛みは、長期間耐えられるような優しいものではなかった。 「…ちょっと見せてみなさい?」 由真は空の言葉を聞くと、空の頭を自分の膝の上に乗せたまま、右手を空の右腕の方に運んでいった。 そして、空の反応と腕の状態を交互に確認し、どこを痛めたのかを探っていく。 「まったく…、あんたは無茶しすぎなのよ…。何秒間落下してたと思ってるの? それをあんな方法で減速させたら…怪我だってするわよ…」 苦痛に歪む空の顔を見下ろしながら、由真は治癒光を空の右腕にかけた。 暖かい光が、空の腕を包み込んでいく。 「…でも……助かったわ…。空、ありがとうね?」 由真に謝罪をしようとしていた空だったが、由真のその言葉を聞いたことで、途端に喜びが沸き上がってきた。
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21775人が本棚に入れています
本棚に追加