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だが、現在のこの状況を軽視してはいられない。
だんだん明確になってきた記憶からさっしても、道具無しで上れるほどこの穴は浅くない。
インビジブルの連続行使で、壁を蹴りながら上がっていくことも考えられたが、高さがはっきりしない以上、無謀な作戦だった。
そのように、空が脱出の方法を考えているうちに、由真が治癒光をかけ終えて、ホッとため息をはいた。
空は右腕を少し動かしてみたが、先ほどのような痛みは全くなかった。
どこをどのようにして体内の腱を治すのかは、空には分からなかったが、今はそんな事は深く考えず、空は頭を上げ、少し汗ばんだ後頭部を由真の膝の上から離した。
「あ…」
その瞬間、由真はそう言葉を漏らしたが、すぐに咳払いをして誤魔化すと、足を崩して、背中にある壁に寄りかかった。
「もう平気なの?」
「あぁ…足痛かっただろ?ごめんな?」
「まぁ…別に良いんだけどね…」
由真の方を振り向いた空と目線を外しながら由真はそう言うと、再び咳払いをし、空の座っている場所のさらに奥を指差した。
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