第六章 因果の迷宮

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「まぁ…他に選択肢もないものね…」 一種の諦めの境地に達した由真は、手のひらを上に向けると、そこから小さな炎弾を作り出した。 それが灯りとなり、暗い道が照らされる。 しかし、それでも奥の方は見えなかった。 「さぁ、行きましょう?」 「あ…あぁ…」 現状に不安しか感じられなかった空だったが、由真の一言を聞き、自然と落ち着きを取り戻していった。 空は一旦戻ってクラウ・ソラスを回収し、そして、二人は一歩足を踏み出した。 床に何か仕掛けがあるかもしれないという考えから、歩みは自然と慎重になる。 由真の手のひらの炎は、形状こそは落ち着いているものの、炎特有の揺らめきは健在だった。 それゆえに、見える距離も範囲も変わってくる。 この現実世界にいる以上、時変者に襲われる心配は無いのだが、先ほどの落下の時のようなことがあれば、今度も助かるという保証はどこにもない。 必然的に無言になりながら、二人は前に進んでいく。
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