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「首尾はどうです?」
同世界で、金髪の青年シャルディ=コルテットは、紫色のローブを纏った時変者、グシオンにそう尋ねた。
目の前に広がるのは膨大な広さをした大地。その中に、数え切れないほどの小さな光がゆらゆらと揺れていた。
『上々です。鍵が揃い、レラジェの秘術も完成しつつあります。漆黒の空ももうじきその姿を再構築できますし、全て計画通りです』
「そうですか。幽幻獣も完成体に近付いているようですし、うまく行きすぎていて少し怖いですね」
『ですが、ジェネラルクラスが三人も倒されています。ですから今回は慎重に、かつ確実に目的を達成しなければなりません』
グシオンが見下ろす先には、相も変わらず光が揺らめいている。
それは気味が悪く、直視できないほどにまがまがしかった。
「そうですね。少なくとも三人必要ですから……。苦戦は免れませんか……」
『だからここまで集めたのです。質より量というのは些か無粋ですが……捕縛は私とレラジェに任せていただければ大丈夫ですから』
「まぁ、僕は与えられた仕事をするだけですから。それよりも……何体いるんですか……?」
その目の前の光の正体は……膨大な数の時変者であった。
本来知性の低いはずのソルジャークラスの時変者が、広い大地に所狭しと並んでいた。
『フフフ……。現在は二万です……。これからまだ増えますよ』
グシオンは実に楽しげにその言葉を口にした。
大きな別れ道が……確かに今作られた。
少年たちはつかの間の平和を堪能した。
だが、彼らは知らない。その平和が、自分たちにとって最後のものになることを。
大切なものを失って、ようやく自らの無力に気がつくのだ。
時代は、今動き始めた。
第四部 完
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