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今、僕の腕の中で眠っている冷たい躯。
赤い涕はもう止まっていた。
いや、尽きていた。
全身にそれを浴びた僕だけがあとに残されていた。
真赤な僕は、青い涕を、冷たくなった肌に伝わせて。
「ごめんね」
僕が追い詰め、僕が突き落とし、僕が今をつくった。
彼女は最後まで、僕を守ってくれたというのに。
「ごめん」
何度呟いても、その言葉はもう彼女には届かない。
そんなこと解っているのに。
真青な涕は止まらずにぼろぼろと僕の頬を伝い、腕の中の真白な肌に吸われていく。
なんて綺麗な死化粧
僕の所為で彼女が死んでしまったのなら、僕はどう報いたらいいのだろう。
ねぇ、君は何を望むだろうか。
冷たくなった、抜殻の君に問いかける。
返事は無い。
でも、その白い肌と真赤な涕の痕が、僕に語りかけたんだ。
さよならさよなら
僕の所為で。
ごめんね。
でも、安心して。
もう離れない。
もう狂わせない。
ずっとずっとそばに居る。
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