霖雨(りんう)

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駅前に着くと、待っているあゆちゃんに度肝を抜いた。 …何となくわかっちゃいたけど… 可愛いあゆちゃんが、あんな人通り多い駅前でヤンキー座りしていた。 「ヤンキー座りって(笑)」 そんな子一人しか居なくて、と言うか今時居ないだろ!と心の中で爽やかに突っ込んだ。 ……可愛いのになぁ。 「ちょっと!どーゆー事?!!」 あゆちゃんは相変わらず怒っていた。 元ヤンは熱くて好きだ。 全て話をしたら「はぁ?!まじムカツクんだけど!アイツ、シメてやりてぇな!」と更にキレた。 「……ここが歌舞伎だったらなぁ」とため息がでた。 半殺しなのに。 そんな虚しさをよそにあゆちゃんは、「ゆいちゃん(セリナの事)は?」と聞いてきた。 「え?店にいるよ。」 と普通に答えたら 「そーなんだ…」と苦笑した。 「純チャン居ないなら私も辞めよー」 あゆちゃんがあっけらかんに言った。 「えっ」 驚いている私に、「本当はもう行きたくないけどな!このまま純チャンと飲みに行きたいわ!だってこれから純チャンどーするの?一人とか絶対嫌でしょ!」とあゆちゃんが言った。 心がじんわりした。 「大丈夫だよ。有難う。罰金あるんだから行きなよ(笑)」 あゆちゃんの事情も知っていた私は、自分の事情にあゆちゃんを巻き込みたくなかった。 そして、出勤時間になったあゆちゃんを見送った。 「連絡するからねー!純チャンもしてよー!!」とあゆちゃんは言った。 あゆちゃんはそれから電話だったりメールをよくくれた。 とても情に熱くて、情に脆くて、可愛いくて、なのに男っぽくて。 私は大好きだった。 あの頃、本当に辛い時に連絡をし続けてくれた彼女に 私は今でも感謝している。 でも 大切にしたいと思う人は どうして居なくなるのだろう。 何があっても 大切ならば向き合えば失わなかったと 自分のヘタレさに吐き気がする。
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