1人の男

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「…これをお願い出来ませんか?」 亮はひどく汚れてクシャクシャになった白い封筒を僕へ差出した そして…深い深い闇へ消えて行った 僕が彼と出会ったのは春にはまだ早い冷たい霧雨が降る夕暮れのバス停だった そこは観光名所でありながらバスの本数は少なく夕暮れ時刻の最終便を逃すと帰れない 「…今から帰りですか?」 バス停にたどり着くとバスを待っていた先客が話しかけて来た どこか昔の二枚目俳優を思わせるような顔で年齢は僕と変わらない30代と言ったところだろうか… 「えぇ…今から帰ります ぶらりと観光でもしてみようかと思って訪ねてみました」 僕は昔から一人旅が好きだった あるだけの現金と少ない着替えに携帯電話… 行き先も決めずに思いついた場所へ そんな時間など気にしないぶらり旅が好きだった 「ここはバスが少ないんですね… バスが来るまで時間もあるし… 何のプランも立てずに来たらこんな感じです」 僕は時刻表を見て苦笑いをしながら彼との間をつなごうと話を始めた
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