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そう言って吹雪さんが差し出したカードが、氷帝メビウスであった。
「このカードを僕だと思ってくれ。
おっと、そろそろ行かないと我が妹に叱られてしまうな。
またいつでも僕に会いにおいで!」
妹、それはあたしと同じオベリスクブルー女子の中で、
女王と呼ばれるほど高い実力を持った、天上院明日香のことだ。
クールな言動、整った容姿で男女問わずに高い人気を誇っている。
あたしは少しだけ嫉妬していた。
妹を大事に思うのは兄として当然であろう。
しかし、それでも天上院吹雪の傍にいられる明日香を羨望してしまう。
「負けないから……あたし……」
誰もいなくなった夕焼けの浜辺であたしはそうつぶやいた。
そして……
「氷帝……メビウス……」
吹雪さんからもらったカードをじっと見つめる。
名前は知っていたが、レアカードのため実際に見たことは無かった。
その能力を見て、あまりの強力さに改めてビックリしてしまう。
「こんなレアで強力なカードを……」
天上院吹雪さんほどのデュエリストにもなると、
こういうカードがたくさんもらえるのだろう。
あの人の性格からして、デュエルに挑んだきた人に(女子限定かもしれないが)
こうやってカードをプレゼントしているのだろう。
それでも、これほど強力なカードをプレゼントしてもらったあたしは、
とても感動してしまい……
ますます吹雪さんのことが好きになってしまった。
・・・
温田とのデュエルも終わり、普段通りの授業が始まる。
クロノス教諭によるデュエル講義である。
今日は転校生が来たばかりということで、基礎的な講義から始めることになる。
あたしはなんとなく転校生の赤帽子くんを見つめていた。
熱心にノートを取り、真剣に授業に取り組んでいる。
まだデュエルを始めたばかりなのだろうか。
あ…
…今、赤帽子くんがクロノス教諭に呼ばれた。
それと同じオシリスレッドの生徒が一人。
実際にデュエルを体感してみようとのことらしい。
顔に似合わず意外と熱心な教師だなぁとあたしは思った。
モンスターで攻撃、守備など基本的なことを、クロノス教諭が講師しながらデュエルが進まれていく。
ドローする姿、モンスターの召喚。
赤帽子くんはなかなかサマになっているかも。
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