三章「天上院明日香」

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三章「天上院明日香」

五月の半ば。 この前のデュエルで気が少し紛れたおかげか、 あたしは以前よりは授業に出るようになっていた。 今日は学区内テストの日だ。 筆記は問題なくクリアできた。 今回は結構優しい問題だったかも。 それにしても周子は物覚えが悪いので筆記試験はかなり苦手なのだが、大丈夫なのだろうか。 次は実技のデュエル。 対戦相手は教員が決め、そのデュエル内容により点数が決まる。 教員に呼ばれ、あたしは早速デュエル場へと向かう。 前回はカイザー亮が相手で、結果が散々だったこともあり、 あたしは気を引き締めてかかった。 「来たか、君の相手は、天上院明日香くんだ。」 一瞬、天上院という言葉を聞いてドキっとする。 しかしすぐ後に、相手があの天上院明日香ということを頭の中で理解したとき、 闘争本能が燃え上がる。 「よろしくね、石原さん。」 天上院明日香はあたしの姿を見ると、そう挨拶してくる。 しかしその表情は心なしか暗い。 その原因はおそらく……兄の、吹雪さんのことだろう。 彼女に対して、あたしは明らかに敵意を剥き出しにしている。 あたしは、そんな自分に罪悪感を感じ、ちょっと自己嫌悪した。 「はい、よろしくお願いします!」 いけないいけない。 嫉妬なんて見苦しいわ! 今は試験に集中するのよ! 審判の教員があたしに話しかけてくる。 「先行、後攻は君が決めるんだ。」 多分、前回の成績を考えての配慮だろう。 もっとも、先行後攻でデュエルが決まるわけでは無い。 「先行でいかせてもらうわ!」 「わかった。」 負けるわけにはいかない! デュエル!! 石原法子 LP4000 天上院明日香 LP4000 確か天上院明日香は、サイバーガールと呼ばれていたはずだ、 女性型の戦士族モンスターを中心に使用してくると思ってもいいだろう。 だとすれば、戦士族特有の展開力を警戒すべきかもしれない。 「まずはあたしのターンね。ドロー!」 そこそこの手札だ…… 「異次元の女戦士を守備表示にするわ! このカードは戦闘を行ったとき、自分と相手をゲームから除外できる! さらにカードを1枚セット、ターンエンドよ。」
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