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クラス委員長、楠木実梨の朝は早い。
学校のホームルームが始まるのが8時30分。クラス委員長はそれまでの間に日誌を取りに行ったり、窓を開けるなど教室の環境を整える役目があるため、実梨はいつも8時に学校に着くように家を出ていた。
「おっはよー実梨」
学校に向かっていた実梨はその声に足を止めて振り向いた。声の主は実梨の友達の杉本蘭(すぎもとらん)だった。その横にはもう一人の友達、佐倉鈴音(さくらすずね)もいた。
「おはよう」
実梨は二人に手を振って、二人が追いつくのを待って再び歩きだした。
二人は実梨と同じクラスで、入学当初から気の合った仲のよい友達だ。朝の早い実梨に付き合って、一緒に委員長の仕事を手伝ってくれている。
「ねえ、どうだった?」
蘭が期待の込もった目で実梨に尋ねた。
「え、何が?」
突然の質問の意味がわからず、実梨は聞き返した。
「転校生よ! かっこよかった?」
そう聞かれて、実梨は良次の顔を思い浮かべた。しかし実梨は男の子との交流がほとんど無いため、どんな顔がかっこいいと言えるのかがわからず首を傾げた。
「わかんない」
実梨の返事に蘭は小さくため息をついた。
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