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1ーBの教室はホームルーム前の喧騒に包まれていた。友達と雑談をしている者がいれば、授業の準備をしている者もいたり、机に突っ伏して寝ている者もいる。
ガラッ
ドアの開いた音に、席を立っていた生徒達は自分の席に戻り、全員が席に着いた頃を見計らって実梨が「起立」と号令をかけた。生徒達は一斉に立ち上がり、続く実梨の「礼」の号令を合図に「おはようございます!」の声が響いた。
「おはよう! 今日も欠席者はいないな?」
吉井の元気な声が教室に響く。生徒達を一通り見渡して、欠席者がいないのを確かめると吉井は満足そうに頷いた。
「今日はみんなに知らせることがある。今日からうちのクラスに新しい仲間ができるぞ!」
吉井の言葉に教室中がざわめきだした。
「先生~、それって転校生ってことですか~?」
女生徒の間延びした声に反応して、再び教室に静けさが漂った。
「その通り! もうドアの向こうで待機しているぞ」
その言葉に、再び教室がざわつきだした。
「どんな子ですか~?」
「女子ですか? 男子ですか?」
「勿体ぶらないで早く紹介してください!」
生徒達は口々に言った。
「まあ落ち着きなさい。それなら早速紹介といこうか。橘、入ってこい!」
吉井の声に、教室のドアがガラリと開けられる。生徒達が期待の篭もった目で見つめる中、良次は最初の一歩を踏み出した。
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