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良次が教室に入ると、女子からは歓声が、男子からは落胆の声が上がった。良次は教壇の横まで歩くと、生徒達の方を向いた。
「橘良次です。今日からよろしくお願いします!」
そう言ってお辞儀した良次の頭を、吉井がポンポンと撫でた。
「橘が早く学校に馴染めるように、みんな色々教えてあげるんだぞ。橘、あそこの空いてる席に座ってくれ」
吉井は指で教室の最後列、廊下から三列目の席を示した。良次が移動するのに合わせて生徒達の視線も移動する。
「それじゃあ今日も一日頑張ろう!」
それを合図に生徒達は席を立った。
「礼」
「ありがとうございました!」
朝のホームルームは終わった。
ホームルームが終わってすぐに、良次の席の周りに人だかりができた。どの生徒も転校生に興味津々で、良次は沢山の質問攻めにあっているがその表情は楽しそうだった。
良次の席からやや離れた窓際一列目の、前から二番目の席で実梨は授業の準備をしていた。その後ろの席にいる蘭が実梨の肩を揺すった。
「転校生、結構かっこいいじゃない。爽やかそうな感じだし」
蘭の言葉に、実梨は良次の方を見たが、人だかりのために良次の姿を見ることができなかった。
「そうかな? やっぱりわからないよ」
「もう…」
実梨の言葉に蘭はつまらなそうな顔をした。
良次は顔が整っていて、何より持ち前の明るさのため表情も明るく、見る人に好感を与える。水泳のために日に焼けた肌、適度に引き締まった体つきも良次の魅力の一つだ。実際に、良次に異性としての興味を持った女子は何人かいた。
しかし、普段から異性に興味の無い実梨には、そんな良次の外見上の魅力は理解できなかった。
しばらくして、授業のチャイムが鳴り響き、生徒達は自分の席に戻っていった。
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