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授業が開始して、教室では教師の声以外は静かになった。一限目は英語で、教師が英文を読む声が教室に響いている。
教科書に目を向けていた良次だったが、もともと英語が得意ではないためすぐに集中力は切れた。良次は顔をあげると、実梨の姿を探して視線をさまよわせた。しばらく探していると、斜め前方に実梨の後ろ姿があった。
(あそこか…結構席離れてるな…)
早く実梨に声をかけたいと思っていた良次は落胆した。本当はホームルームが終わってすぐに実梨のところに行きたかった良次だが、転校生にはお決まりの質問攻めにそれを断念した。
(次の休み時間になったら、すぐに楠木さんのところに行こう)
良次はそう決意し、実梨に何て話しかけようかとあれこれ考えていた。
一限目が終わり、良次は早速話しかけようと席を立とうとした。しかし実梨が立ち上がり席を離れたため、良次は勢いを削がれてしまった。
そんな良次の周りに、再び人だかりができた。
(しまった…)
再び始まった質問攻めのために、良次はまたしても実梨に話しかけることができなかった。
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