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次の休み時間も、昼休みですらも良次は実梨に話しかけることができなかった。
まず自分の席から動くことができない。あっという間に生徒達に囲まれてしまうため、とても実梨に話かけに行けるような状態では無かった。そのうえ五時限目は体育のため、良次は実梨が今いるはずの更衣室とはまったくの正反対にある更衣室にいる。次の休み時間も着替えのために潰れるため、今日中に実梨に話かけられる可能性はほとんど絶望的になった。
(なんでここまでタイミングが悪いんだ!?)
良次は今すぐにでも実梨のもとに飛んでいきたい衝動を必死にこらえていた。
「お? 転校生、何震えちゃってるのかな?」
ふいにかけられた声に顔を上げると、良次の周りにはまたしてもクラスメートの輪ができていた。
「まさか、体育が苦手とかか?」
聞かれた内容に対して首を振り、良次はロッカーをバタンと閉めた。
「冗談、むしろ好きなくらいだ」
「やっぱりな~、そんな感じがするぜ」
他愛のない会話に笑うクラスメート。その中の一人が思いついたように手を叩いた。
「わかった! 女子更衣室が遠いのが残念だったんだろ!」
その言葉に良次の肩がギクリと震えた。
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