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クラスメートが放つ刺々しい雰囲気が気になって、良次は口を開いた。
「みんな、どうしたんだ?」
すると、一人が盛大なため息をついて良次の肩をポンと叩いた。
「橘。悪いことは言わねえから、委員長だけはやめておいた方がいいぜ」
「その通り。あんなメガネ委員長、相手にするだけでも疲れるぜ」
「いくら成績がいいっていっても、お高くとまりすぎなんだよ。愛想も無いしな」
次々と出てくる実梨の悪口に、良次は驚いて言葉も出なかった。
「…おい、そろそろ行かないと授業始まるぞ?」
そう言ったのは、先程良次を気遣ってくれたクラスメートだった。その言葉に反応して、良次を取り囲んでいたクラスメート達は「やべー」と言いながら更衣室を後にした。
二人だけで更衣室に残された良次は、ジッと自分を見ているクラスメートに向かって苦笑した。
「ありがとう。…えっと、名前は?」
尋ねながら歩み寄ると、相手は良次よりも背が高く、体格もガッシリとしていた。刈り込んだ髪と体格が見事に似合っていて、良次は自分の未成熟な体が少し恥ずかしくなった。良次を見下ろす形になったクラスメートは、低い声で口を開いた。
「城間 武(じょうま たけし)だ」
「じょうま?」
「呼びにくいだろう? だから、周りからはジョーと呼ばれている」
さりげなく口にされたあだ名だが、良次はそれが可笑しく思えて吹き出してしまった。
「どうした?」
不思議そうに自分を見ている武に、良次は肩をポンポンと叩いて顔を上げた。
「いや、よく似合ってるぜ。俺もジョーって呼んでいいか?」
「好きに呼べばいい」
「俺は、良次でいいからさ」
「わかった」
武の返す言葉は短いが、その表情は穏やかだった。
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